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4.物流の大きな変革【全8回連載】

流通経済大学 流通情報学部 教授
矢野 裕児氏

 従来の物流改革は物流事業者による対応が中心であったのが、それだけでは難しいということから、現在は荷主企業、特に着荷主企業に着目し、物流改革が議論されていることが特徴といえます。さらにこれまでは効率化、生産性向上の議論が中心でしたが、商慣習の見直し、関係者の意識改革も含めた議論がなされています。

 物流現場では、長時間の荷待ちや契約にない附帯作業等による長時間労働、価格競争に伴う厳しい取引環境・雇用環境等の問題が発生しています。このような課題は、人手不足の原因となっています。そのため、「物流事業者が提供価値に応じた適正対価を収受するとともに、物流事業者、荷主企業、消費者、経済社会の“三方良し”を目指す」という視座が重要とされています。

 2024年問題の対応が遅れている背景として、物流にかかる負荷が見えにくく、価格として明確になっていないため、荷主企業において、物流課題がきちんと認識されにくいということがあります。一般的な商取引において、商品価格と運賃が一体となっており、商取引の価格において運賃等の物流コストがきちんと明示されない店着価格制であることが指摘されています。このため、特に着荷主企業において、物流の効率化に積極的に取り組もうとするインセンティブが働かないという状況が発生しています。

 さらに、トラックドライバーの拘束時間のうち、荷積み・荷卸しに伴う荷待ち・荷役作業時間等が約2割を占めており、貨物を発送する発荷主、あるいは受け取る着荷主に起因する非効率性が大きな課題となっています。物流改革を進めていくためには荷主企業等の理解を深め、意識改革を進めることが必要です。

 日々の業務では、商品等の需要に基づいて着荷主企業が発注を行い、物流需要が決定されます。すなわち、発注段階で、輸送量だけでなく、輸送のロット、リードタイムなどの物流条件も決定されることとなります。しかしながら、着荷主企業は運送契約の当事者でなく、発注の際、物流については考慮していないことが多いことから、結果的に物流に大きな負荷がかかり、効率化、生産性向上を妨げている場合が多いといえます。さらに、物流事業者においても、元請事業者と下請事業者による多層的な取引構造となっている場合が多く、結果的に現場の実運送事業者に負荷がかかりやすい取引構造となっています。そのため、関係者が連携して、物流の適正化や生産性向上に取り組むことが重要となっています。

図 物流における取引関係・モノの流れ

出典:『持続可能な物流の実現に向けた検討会最終取りまとめ』(経済産業省・国土交通省・農林水産省)
hhttps://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/20230831_1.pdf
「8ページ 図6 物流における取引関係・モノの流れ」をもとに作成

 このような状況のなか、各業界団体等では、様々な対応策が検討されています。消費者に比較的身近な業界として、例えば加工食品メーカーと卸売企業の間では、2019年以降、配送日を受注の翌日でなく翌々日にする取り組みが進んでいます。これによって、余裕を持った配車計画を立てやすくなります。さらに、首都圏のスーパーマーケットで構成される団体でも、加工食品における定番商品の発注時間の見直し、特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保、納品期限の緩和、流通BMS(Business Message Standards)による業務効率化を進めています。さらに、百貨店業界においても、開店前納品の是正、納品リードタイムの緩和を進めています。これらの特徴は、いわゆる着荷主側が連携して、積極的に物流改革を進めようとしていることです。

今回まで物流全体の2024年問題に関する動向についてお届けしてきました。
  1.物流危機とは何か?
  2.物流2024年問題とは
  3.国が進める政策パッケージ
  4.物流の大きな変革

次回より農産物物流に関する内容が始まります。引き続きご覧ください。

以上

※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年11月24日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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