3回にわたって紹介してきた株式会社米子青果の事例も、今回が最終回です。今回は、働き方改革を進める中での障壁と成果、そして将来について、上田副社長に話をうかがいました。
働き方改革の障壁とその対応方法
働き方改革を進める上で、1番大変だったことは郵送業務のペーパーレス化だったそうです。これまで米子青果では膨大な量の郵送業務が発生していました。ここを改善したいと考えた上田副社長はペーパーレス化を推進しようとしますが、自分の業務がなくなるのではないかという恐怖心から、社内でも反対する方がいたそうです。
上田副社長は「今まで郵送していたものをメールとFAXに変更させてもらいたい」という旨を、数百件ものすべての取引先に電話で交渉しました。拒否されることもありましたが、その際には「支払いサイトを週1回から月1回にしてもらう」など少しでも郵送業務が減るような交渉を行ったといいます。
交渉に入る前、社内で反対していた方たちからは「取引先に電話しても無駄だと思う」と言われましたが、上田副社長が実際に取引先に電話をしてみると「実は郵送されてきていることが迷惑でFAXの方がありがたい」「郵送頻度を落としてほしい」といった要望も多く挙がってきたそうです。これを社内にフィードバックすると、社内で反対していた方も「自分たちのしていた業務が相手にとって良くないことだった」と気づくことになり、社内外双方の郵送業務の削減が進んでいきました。今でもペーパーレス化に反対する取引先もありますが、応じてくれる取引先は次第に増えていると言います。「どこかの宛先に1回送る」ことを郵送1回とカウントすると、米子青果では月1000回程度の郵送が削減されたそうです。
働き方改革に取り組んだことで得られたもの
残業時間が4分の1に削減されたことや、休暇がとりやすくなったこと、営業が本来の仕事をできるようになったことに加え、「社内でも働き方を変えようという意識が芽生え、働き方の議論ができるようになったことも大きい」と上田副社長は語ります。これまでの働き方は「当たり前のもの」であり、疑問を持っていた従業員は少なかったといいます。社内の雰囲気が変わったきっかけを、上田副社長は「『この人に言えば何かが変わるのではないか』と思ってもらえるようになったからでは」と分析します。
上田副社長は一連の業務改善の中で、大切にしていたことがありました。それは、「『こうやらなくてはいけない』『いいからやれ』とは言わないようにする」ということです。例えば、ITツールに拒絶反応を示してしまうような人に対しては、部会などでコミュニケーションもとれるので連絡はチャットではなく口頭でもよい、と柔軟に対応しているそうです。このあたりのケアも含めて丁寧に行ったので、従業員が「この人は何を言っても乱暴なアイデアを出してこないと思ってくれていたのでは」と上田副社長は推測しています。
また、上田副社長は1番印象的だった従業員の声を紹介してくれました。米子青果では畑で芋の栽培もしているそうですが、基幹システムを一緒に設計した事務員から「これまで忙しくて何年も畑を手伝いに行ったことがないが、今年初めて畑を手伝いに行けた」と言われたときに、1番業務改善を実感したと言います。
今後挑戦したいことや今後の目標
今後取り組みたいこととして、上田副社長は「もう1度基幹業務の改善をしたい」と話してくれました。「これまでの業務改善で仕組みはできたものの手をつけられていない部分がたくさんあるので、今ある仕組みでもう一度業務改善をしていきたい」といいます。
また、「家に帰っての業務を減らしたい」とも考えています。30分でも1時間でも家での仕事は大変なので、それを少しでもなくして楽にしてあげたいとのことです。
更なる挑戦として、「完全に紙をなくすことにも挑戦してみたい」とも語ってくれました。
1度働き方改革をしたからといって、そこで終わりではありません。その時の社内の仕組みや社会、その他様々な要因により、改善点は見つかっていきます。上田副社長はここで満足はしておらず、さらに先の働き方を見据えています。
ここまで6回にわたり、株式会社須崎青果、株式会社米子青果と、2社の働き方改革の取り組みを紹介してきました。働き方改革の取り組みの共通点なども少しずつ見えてきたのではないでしょうか。
次回からは、これらの事例をどのように自社の取り組みに活かしていくかを解説していきます。
※取材:2022年7月
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2022年10月21日)
※本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。