前回までに紹介したような様々な取り組みを行うとき、誰か1人だけが懸命に取り組んでも効果は得られません。須崎青果と米子青果の両事例でも「業務効率化の大きな障壁は『人』だった」とあったように、新しいことを始めるときに人を巻き込むことはとても難しいのです。
そこで今回から2回にわたり、周囲を巻き込みながら働き方改革を進めるためのポイントを紹介します。
「なぜ」取り組むのかを説明する
前回までのメールマガジンでも度々お伝えしていますが、周囲を巻き込むためには「なぜ」取り組むのかを説明できるかが最も大切です。新しいことを始めるとき、「どこの市場もやっているから」と言われるよりも「毎月これだけ長時間労働と休日労働が多いのを改善したいから」と説明された方が、当然納得できます。
須崎青果の事例でも、働き方改革を良く思わなかった従業員に対し、市川社長は「なぜ残業時間を減らす必要があるのか」「業務効率化をするとどんなメリットがあるのか」という方針を1人1人に根気強く説明しました。取引先の経営陣にまで説明をして協力を要請したことは、メールマガジン第6回(9/23掲載)で紹介した通りです。
また、過去に配信したメールマガジン第1弾「地方市場経営革新事例」の中でも、「なぜ」を明確にして積極的に動いているリーダーの成功事例として、倉敷青果荷受組合の事例が紹介されています。
「なぜ」を説明するために重要なことは、最初に行う現状分析です。この分析で見つかった問題の解決こそが「なぜ」の部分です。これが一連の働き方改革のスタートでもあり土台になるのです。土台がなかったり土台が脆いと、その上にどんな立派なものを乗せても崩れてしまいます。働き方改革も同様です。まずは「なぜ」取り組むか、方針をしっかりと固めましょう。
経営陣が積極的に・根気強く動いて姿勢を見せる
「あとはよろしく」と従業員に任せきりの経営陣と、「一緒に頑張ろう」と従業員と一緒に動く経営陣、皆さんはどちらに協力しようと思うでしょうか。答えは言うまでもありません。
米子青果の事例では、初めは業務効率化を不要と考えていた従業員もいたようですが、上田副社長が積極的に働き方改革を進めその結果を出していくことで、「この人に言えば何かが変わるかもしれない」と従業員が思うようになり、従業員から業務効率化の意見が出るような社内風土にまでなりました。郵送業務の削減の際も、数百件もの取引先すべてに上田副社長が電話で交渉したことは、メールマガジン第10回(10/21掲載)でも紹介しました。上田副社長は「郵送業務削減に渋っている取引先すべてにもう1度の電話交渉をする予定」とも教えてくれました。実は、この郵送業務削減の事例には、働き方改革を成功させるための秘訣がもう1つ含まれています。もう1つの秘訣は次回紹介しますのでご期待ください。
このように、まずは経営陣がぶれない理念や方針を持って、積極的に動くことがポイントです。しかし、その理念や方針を周囲に押し付けるだけだと、反発する人も出てきてしまいます。
そこで次回は、周囲の声にも耳を傾けながら一緒になって業務効率化を進める方法を紹介します。
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2022年12月9日)
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