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7.農産物物流における対応策【全8回連載】

流通経済大学 流通情報学部 教授
矢野 裕児氏

 農産物物流の問題を解決していくためには、1つの方策を実施すれば解決ということはなく、様々な方策を講じていくことが必要となります。対応策として、まず商物分離の推進による輸送の直送化、船舶・鉄道といった他の輸送手段への転換が挙げられます。

1-1.商物分離による直送化の推進

 従来、卸売市場が取り扱う農産物は、商物一致の原則によって、卸売市場に実物が搬入されるのが原則でした。そのため、特に大都市の拠点市場においては、多くの車両が集中、輻輳し、限られたスペースのなかで処理しなければならず、混乱する状況が発生しています。卸売市場法改正によって、商物分離が認められ、生産地から卸売市場を経由せず届け先へ直送することが可能となります。直送化は、物流効率化、卸売市場混雑緩和という面から、とても効果が大きいといえます。出発地、目的地が同じ荷物が大量にある場合は、貨物車1台を貸し切って直送化ができるため、取り組みが容易といえます。しかしながら、各生産地から届け先に、貨物車1台を貸し切るような大ロット輸送の農産物は限られているという問題もあります。ロットを大きくするためには、1種類の農産物では難しく複数種類の農産物を混載する、あるいは複数生産地の農産物を広域に集めて混載するなどの工夫が必要となります。

1-2.船舶・鉄道といった他の輸送手段への転換

 トラック輸送から船舶・鉄道への転換は、長距離輸送で特に有効な方策といえます。北海道から本州等の道外への輸送については、現在でも船舶・鉄道が重要な役割を果たしています。ホクレン取扱分の令和元年度の道外への輸送手段別数量をみると、フェリー・RORO船利用が 134.7万t(53%)で、牛乳、にんじん、だいこん、スイートコーン、長いもなどの野菜、米などを輸送しています。特に大洗港、日立港経由での関東向け、敦賀港経由での関西向けの輸送量が多くなっています。そのほかにも不定期船が42.4万t(17%)で、麦、米などを輸送しています。一方、鉄道利用は71.6万t(28%)で、玉ねぎ、馬鈴しょ、米などを輸送しています。また九州から本州等への輸送については、現在でも船舶・鉄道は一部利用されていますが、拡大に向けての検討が進められています。しかしながら、船舶についてはトラックより運賃が高くなることが多い、鉄道利用については輸送時間が長くなるなどの課題があります。

 また、農産物物流は荷役時間、手待ち時間が長いことが問題となっており、この時間をいかに削減するかが重要です。その方策として、パレット化の推進、バース予約・受付システムの導入が挙げられます。

2-1.パレット化の推進

 農産物物流において、ドライバーが確保しにくい理由の1つとして、手荷役の問題があります。短距離輸送の場合は、パレットが主に利用されますが、中長距離輸送においてはパレットを利用しない場合が多くなっています。その理由として、パレットを利用すると積載率が落ちるという問題があります。中長距離輸送では、積載率を重視することから、パレットを利用しないことが多いのですが、10トン車では、手積み、手卸し作業にそれぞれ2時間程度かかり、作業者にとって大きな負担となっています。このことはドライバーが農産物輸送を敬遠する理由ともなっています。また、パレット、さらに段ボール箱のサイズが標準化されていないという問題があります。標準パレットサイズは、JIS(Japanese Industrial Standards)規格のT11(1100×1100mm)型とされていますが、各生産地では、保管用に独自のパレットを利用していることも多く、一貫したパレチゼーションを目指すべきですが、すぐに移行するのが難しいといえます。また、段ボール箱のサイズも統一されておらず、生産地が独自にサイズ決めている場合が多いことから、パレットとサイズが合わず、積載率が落ちるという問題があります。さらに、パレットを導入しても卸売市場での回収率が悪く、パレット循環の仕組みがうまく機能しないということもあります。このように課題が多いのですが、パレット化の推進は、積み替えを容易にし、混載を進める上でも重要であり、欠かせない視点といえます。

図1 T11型パレットの導入状況

出典:青果物流通標準化検討会「令和5年9月11日青果物流通標準化検討会(第5回)」(農林水産省主催)
【資料5】各産地における11型パレット導入・外装サイズ変更に係る取組状況(p.3)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-436.pdf

2-2.バース予約・受付システムの導入

 入出荷の時間帯が集中、混雑し、車両がバースに付けられない、あるいは荷積、荷受作業が間に合わない等により、長時間の手待ち時間が発生する場合が多くなっています。バース予約・受付システムを導入することにより、車両を計画的に受け入れ、平準化することによって、手待ち時間を減らそうというものです。ドライバーはスマホなどで簡単に予約することができます。様々な業界での導入が進んでいますが、加工食品卸売業では共通のシステムを導入しています。また、卸売市場でも一部導入が進んでおり、今後の普及拡大が望まれます。

図2 バース予約・受付システムの導入効果

出典:農林水産省・経済産業省・国土交通省「農産品物流の改善・効率化に向けて(農産品物流対策関係省庁連絡会議)」
農産品物流の改善・効率化に向けて(農産品物流対策関係省庁連絡会議 中間とりまとめ)平成29年3月(p.19)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-9.pdf

以上

※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年12月15日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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