前回は、まずは経営陣が理念や方針を持って積極的に動くことが大切だ、と解説しました。とはいえ、周囲から反対の声が出ることも少なくありません。
そこで今回は、周囲からの声をどう反映し、どう対応していくかを紹介します。
反対の声に1つずつ対応していく
これまでのメールマガジンでも紹介したように、新しいことを始めるときには変化を恐れて抵抗する人が出てきます。前回紹介したような「なぜ」を丁寧に説明しても、何かしら理由をつけて反対される場合も出てくるかもしれません。その場合でも、個別に丁寧に対応していきます。
メールマガジン第10回(10/21掲載)の米子青果の郵送業務削減の事例では、「取引先に交渉しても無駄。郵送業務は減らせない。」と社内からの反対が強かったことを紹介しました。そのとき上田副社長は、「本当に交渉しても無駄かどうか取引先に直接聞いてみよう」と全取引先に連絡をしました。結果、取引先の中にも郵送を望んでいないところがあるとわかり、それを社内にフィードバックしたことで反対していた従業員の理解も得られ始めていきます。
同じく米子青果の事例では、ITツールを導入した際、どうしても抵抗があってツールを使えない人には代替案を用意するなど、柔軟な対応を行いました。
いずれも「なぜ」反対なのか、「なぜ」使いたくないのかを聞き、対応方法を個別に考えるという方法です。「反対だから切り捨てるのではなく、出てきた問題には1つずつ対応していく」、これは須崎青果・米子青果の両取材時にも度々出てきた言葉です。
フィードバックをしてもらい納得感を高める
PDCAサイクル(※)という言葉もあるように、業務効率化に取り組んだ結果、どのような効果があったのかを検証することで更なる効果を生みます。
須崎青果では、半年に1回程度、従業員に満足度アンケートをとっています。「やりっぱなしではダメ。従業員からフィードバックしてもらってこそ意味がある。」との市川社長の考えにより、取り入れられている施策です。従業員からの声を聴きそれを反映することで、従業員の納得感が高まります。
※PDCAサイクル:Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことで、品質向上や業務効率化を実現しようとする手法です。メールマガジン第2弾「農家の課題を知ることで市場と生産者の適正利益を目指す」にて、経営コンサルタントの本田茂先生が詳しく解説しています。
参考:fudoloopメルマガ連載「農家の課題を知ることで市場と生産者の適正利益を目指す」第3章 市場から農家に対してのアプローチ(1)〜農家へアプローチする前に計画を立てる〜
従業員が積極的に動くための動機付けをする
従業員が「自分から動いてみよう」と思える仕組みを作ることも有効です。特に業務効率化は、労働時間削減は残業代削減となり、従業員にとっては収入減になることも多いです。須崎青果・米子青果の両事例でも、業務効率化により残業代が減ることへの不満の声はあったそうです。
その声を聴いた米子青果では、生産性の高い人をきちんと評価するために、評価制度を入れました。これにより、「生産性高く仕事をすれば良い評価をしてもらえる」という従業員の動機付けの仕組みをつくりました。他業界では、業務効率化により減少する残業代の分、調整給を出すなどして給与を減らさない方針を取っている企業もあります。
評価制度や手当支給はあくまで一例ですが、従業員に積極的に動いてもらうための動機付けは大切です。
ここまで8回にわたり、働き方改革成功事例を自社に取り入れるためのポイントを紹介してきました。何かヒントは得られたでしょうか。
次回はいよいよ最終回です。最後までお付き合いください。
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2022年12月16日)
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