前回までは、業務のやり方や分配を変えることで、業務効率化を行う方法を紹介してきました。しかし、今の業務のやり方を大幅に変えずとも、少し視点を変えることで残業時間削減や休みの取りやすい職場作りをしている市場も存在します。そこで今回は、本メールマガジンで取材した市場に加え、農経新聞社の宮澤社長からお聞きした市場の話をもとに、業務効率化とは言えないまでも少しの工夫でできる働き方改革の事例を紹介します。
社外の協力を仰ぐ
発注時間の取り決めを厳格化する —農経新聞社宮澤社長の紹介事例
ある市場では、スーパーマーケットの発注時間の取り決めを厳格化しました。社内規定で発注時間は17時までと決まっていたものの、19時や20時になっても担当者が対応してくれるため、それに甘えて遅い時間に発注することが増えていたとのことです。これを「発注は17時厳守」とスーパーマーケットと改めて確認したことで、だらだらと発注時間が延びることがなくなり、自社の従業員だけでなくスーパーマーケットの担当者の残業時間も削減できたといいます。
退職した方に一部業務を委託する —農経新聞社宮澤社長の紹介事例
朝の競りにより長時間労働が発生していることに着目した市場では、「退職した方をアルバイトとして雇い朝の競りだけお願いし、通常の営業スタッフを8時頃に出社させる」という対応をとっています。
また、営業スタッフが産地を周りきれていないことに気付き、「退職した方に産地を周ってもらい、取引まではしないものの要望を聞いたり関係を深めてもらう」という対応をとっている市場もあります。
いずれも業務自体をなくすのではなく、任せられるところを部分的に取り出して外部に委託した事例で、業務の再分配に近い考え方です。どちらの市場でも、この取り組みにより長時間労働が減っています。
郵送の頻度を交渉をする —米子青果事例
米子青果でのペーパーレス化の事例では、郵送業務のペーパーレス化に渋る取引先にも「ならば回数を減らしてもらえないか」と交渉したことで、郵送業務の回数を減らせました。上田副社長が実際に取引先に話をしてみれば「実は郵送されてくることが迷惑だった」と言われた例があったことも、メールマガジン第10回(10/21掲載)で紹介した通りです。
社内の仕組みを見直す
不要な早朝出勤を禁止する —農経新聞社宮澤社長の紹介事例
決められた出社時間よりも早くから作業する従業員が多いことを問題視していた市場では、働き方改革のために「必要のない早出を禁じ、守れない場合には評価の対象とする」との旨のルールを定めました。そのルールを定めた翌日以降、従業員は誰も早出をしておらず、それでも業務は問題なく回っているそうです。
休みの取りやすい仕組みをつくる —米子青果事例
米子青果の事例では、年次有給休暇取得の理由を不問にしたり、「土曜日は会議を入れない日」と定めたことで、休みを取りやすくなるような工夫をしていました。また、会社にカメラを設置し、出社せずとも自宅のPCから荷物の確認ができる仕組みも作りました。これにより、荷物確認のために出社する必要がなくなり、休みがより取りやすくなったといいます。
今回紹介した事例は、業務の無駄を省くのでも、業務のやり方を大きく変えるのでもなく、交渉や仕組み作りにより働き方改革を進めていったものばかりです。このような取り組みにより自社の問題を解決する方法もあるということは、ぜひ覚えておいてください。
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2022年12月2日)
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