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13.第2章 農業経営の課題 事例3(後編)〜販売規模5,000万円~1億円の農家の経営支援〜【全25回連載】

青果流通経営コンサルタント 本田 茂 氏

農業経営の課題 事例3(後編)〜販売規模5,000万円~1億円の農家の経営支援〜

 前回は、複数法人を立ち上げた大規模施設園芸農家の事例を紹介しました。台風被害からの復旧とそれに伴う経営課題に対して、筆者は以下の流れで課題整理をし、支援していきました。

事例3 経営支援とその後の変化

資金繰りの見える化

 まず取り組んだのは、復旧から事業再開までの収支計画と資金繰り表の作成でした。
 この法人には顧問税理士がついており、月次の試算表は作成できていました。多くの農家では、過去に本メルマガで紹介した販売規模1,000万円の農家(事例1:メルマガ第8回、第9回)のように、顧問税理士はつけず、月次損益管理ができていません。年末に慌てて1年間の会計入力をし、自分たちの損益の把握ができていないまま、翌年の農作業に向かうことがほとんどです。本事例の農家は、既に1つ目の法人を軌道に乗せています。しかし、そのような農家でも、収支計画や月次の試算表をチェックして将来を見据えた経営管理をするとなると、不十分なケースが多いように思います。
 この農家では、復旧1年目は、交付金や融資、復旧に関する工事代金など大きなお金が動きましたが、1年先までの資金繰り表を作成・確認することで、役員は現場に集中することができました。また、国の交付金や金融機関からの支援も得られたことで、復旧の最初の一歩を踏み出すことができました。

大規模施設園芸特有の収量と単価の問題解決

 次の問題は収量と単価でした。小さなパイプハウスと違い、大規模ハウスでは気温や湿度はシステムでモニタリングされ、自動で潅水するため気候の影響を受けにくいという利点があります。しかし、1haもの大規模施設園芸となると、果菜特有の葉かき作業や脇芽取り作業などの管理が追い付かず、少しの気候変動でも対応がより困難になります。そこへ収穫ピークがやってくると、さらに労力が追い付かなくなるのです。大規模ハウスでシステムで管理しているから出荷が安定している、と見た目から決めつけるほど農業は簡単ではありません。
 この事例でも、復旧1年目はピーク時の労力不足により、目標としていた収量を達成することができませんでした。
 さらに、ミニトマト栽培は市場販売が中心でしたが、市場では北海道産や他産地と出荷が重なるなどで販売価格が思わしくなく、有利販売どころか都中央の市場平均価格よりも販売価格が下回っていました。立派な経営者に見える彼らですが、市場に対して価格を上げてもらうという行動には躊躇しているようでした。農家が市場に価格面で主張することを苦手としているのは、過去に紹介した販売規模1,000万円の事例(事例1:メルマガ第8回、第9回)でも説明した通りです。筆者と役員で市場流通関係者との話し合いの場を設けましたが、販売価格が都中央平均価格より下回っている質問への明確な答えは得られませんでした。
 家族経営と雇用を中心とした法人経営では、大きな差があります。それは労務費です。家族経営では雇用をしていても家族の労力割合が大きく、繁忙期でも家族に対しては残業代などなく働いてもらえます。しかし、雇用を中心とした場合、残業代も含め働いた分の賃金の支払いが必要になります。そのため、労務費の比率(売上を100としたときに占める労務費の割合)は、家族経営と比べると時には20~30%も違ってきます。大規模施設園芸になるとさらに減価償却費や固定資産税、燃料費などの固定費も、家族経営とは比べものになりません。そのため、家族経営の農家と同じように相場次第という取引をしていては、5,000万円を超える規模の経営体では立ち行かなくなっていくのです。

更なる復旧を目指して

 現在、ミニトマトは高糖度や食味重視の品種を選んでいます。同時に、量販店の売場を確保できる市場や仲卸の選定などを行い、販売戦略の再構築支援をしている最中です。
 また、毎月の役員ミーティングは、金融機関、税理士等の士業や県の普及員にも参加してもらい、オンラインで行っています。経営面、栽培面、販売面と、全体の進捗を共有し、対策をいち早く考えられるようにチームで復旧に取り組んでいるのです。さらに第三者が関与することで、それをいいプレッシャーとして感じてくれているようです。

経営課題達成のためのポイント

・復旧から事業再開までの大きな資金の移動を見える化する(経営計画・収支計画)
・毎月の販売単価と都中央平均値との比較を行い、販売価格を上げる意識を高める
・量販店ごとにターゲットを決め、どこの市場とパートナーを組むか、販売戦略を策定し実行する
・毎月の試算表から実績を共有し、第三者を交えて課題や対策を話し合う
・経営のPDCAを回し、いつでも融資を受けられるように金融機関との信頼関係を構築する

以上

※fudoloopメールマガジン13号(掲載日:2022年3月18日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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