前回に引き続き、農家の課題を説明します。今回は、農家のタイプ別の課題を見てみましょう。
表:農家の分類と課題 その2
新規就農者
1,000万円未満の規模では、新規就農者が増加しています。これは、Iターンによる非農家や地域おこし協力隊(市町村から数年間給与をもらい、住居も手当される制度)の就農が各地で増加していることが影響しています。国も、新規就農者認定制度を設け、認定した新規就農者への制度融資や補助金(年間120~150万の所得補償×5カ年)等で就農定着を支援しています。新規就農者のため、資金や栽培技術が乏しいことが課題です。
有機栽培生産者
1,000万円以上~2,000万円未満の規模では、有機栽培に取り組む農家が近年増加しています。ロットが少なく、規格も販路も独自に求める傾向があるため、市場との相性が悪いですが、今後無視できない存在です。
集落営農組織
集落営農組織とは、高齢化した稲作農家や兼業農家、畜産と稲作を両方行う専業農家などが、共同で機械を使用し、共同で転作作物(大豆や麦、飼料米など)を栽培する任意組織です。かつて、国から集落営農組織への補助金の要件に「法人化」が盛り込まれた影響により、全国で集落営農組合の法人化が増えています。
この組織の課題は、高齢化と後継者不足です。後継者不足を補い周年雇用するためには、園芸を新たに開始する必要があります。
また、この組織の構成員に多い稲作農家は、機械操作が得意な反面、選別作業が苦手です。業務用野菜を契約栽培する例や育苗ハウスの後に園芸を栽培する例がありますが、具体的な販売先をどうするか、何を栽培したらいいかなど、多くの組織は頭を悩ませています。
稲作からの転作
稲作専業の個人農家は、年々農地が集約され、経営規模が大きくなっています。こうした農家は後継者がいるため経営に積極的ですが、親世代の高齢化による従業員確保が課題となっています。周年雇用のために、育苗ハウスの後の園芸や、転作農地での園芸に取り組む方もいます。稲作の片手間で取り組んでいることもあり、園芸単体では赤字という課題を抱えながらも、雇用を継続するために取り組んでいる農家が多いのが現状です。
企業参入
以前は、小売業や飲食店チェーンが自社の食品廃棄物を堆肥に活用し、自社ファームとして循環型農業に参入するケースがありました。最近でも、障害者雇用を兼ねて参入する例や、IT事業者が自社の技術を活用する例、地域の建設業が将来の業界の不況対策として参入する例など、様々な企業参入が行われています。
彼らの課題は流通です。意外なことに行政の支援も得られにくいため、相談先に困っている企業も多いように思います。そんな彼らが販売の相談を市場にすると、「規格や相場次第」などと曖昧な返事をされ、ビジネスとして全く手ごたえを感じないという意見も出ています。
出資型
意欲的な農家に企業が出資するケースも見逃せない動向です。アグリビジネス投資育成会社(農林中金、全農、日本政策金融公庫が出資した会社)では、600件以上、実に100億円もの金額を農業法人に出資しています。生き残りをかけた地方銀行がファンドを作り農業法人に出資するケースも、徐々に増加してくると考えられます。
出資を受けた農業法人は、設備投資や6次化など規模拡大や新たな流通を模索しています。しかし、その反面、雇用を抱え新しい流通に苦戦しているところも多いように思います。
近年増加しているこれらの農家は、一見、意欲的で経営も順調に見えますが、どのタイプも流通面をはじめ、様々な経営課題を抱えています。
特に、農業法人や農業に参入した企業が市場をブラックボックスと感じていることは、前述の通りです。そんな彼らに市場もアプローチをしないため、取引相手となるはずの両者に接点がないのが現状です。
市場に知ってほしい農家アプローチのためのワンポイント
地域の意欲的な農業法人や農業に参入した企業に市場からアプローチしましょう。彼らは皆、流通の課題を抱え、困っています。
以上
※fudoloopメールマガジン04号(掲載日:2022年1月7日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。