2019年、弊社は青果流通経営 コンサルタント本田 茂 氏とともに、企業成長・利益や持続可能性を高めるための変革を実践している地方市場の青果市場・卸の経営者の方々に取材を行いました(注1)。その結果感じたことは、販売先から要求されたことを受動的に対応するだけではなく、販売先やその先の消費者も考えたマーケットニーズへ能動的に対応する「マーケットイン」志向を実践していることでした。加えて、その実践のために業務プロセス改善に取り組んでいることでした。
まず、「マーケットイン」とは、顧客(マーケット)の声を聴き、顧客の要求や困りごと(ニーズ)を突き止め、それらを解決する製品を市場に投入しようとする考え方のことです。消費者や販売先などマーケットが欲しいと思う製品は、需要の高いものなので自ずと競争力が強く、収益性も高い製品になります。
具体的な事例として、静岡県 沼津中央青果様では、消費者の動向観察に加え、種苗メーカーから「カリフローレ」が消費者にも人気があるという情報を提供してもらい、農家へ新たな作物として提案して育ててもらいました。その結果、農家、販売先、市場の三方良しを実現し、収益改善にも繋がりました。
これら「マーケットイン」志向を実践するには、現場では今までの業務に加えて、顧客である販売先や農家の要求や困りごとを突き止めるための新たなる行動が必要となります。個人で多くの業務を行い慢性的な長時間労働が発生している状態では、「マーケットイン」志向を実践することは難しいでしょう。そこで、業務の効率が低下しているアナログなプロセスをデジタル化することで新たに時間を生み出す工夫や、個人依存ではなく組織として情報共有を行うための業務プロセス改善を同時に取り組む必要があります。
先の事例の沼津中央青果様では、地場産農家の個選品について量販店より高いニーズがあるものの、農家からの集出荷量が安定しないため、量販店に先行相対提案が安定してできないという課題がありました。その原因の一つは、集出荷量が市場に入荷するまでわからないことから提案が難しいということです。そこで、集出荷データを事前に農家より午前中にデジタルツール(fudoloop)を利用してデータ送信してもらうことで、その集出荷データを活用し量販店への先行相対提案に対する課題をクリアしていきました。
また、農家において集出荷情報のデジタルツールを活用することは、面倒なことが増えると否定的な意見もありましたが、利用しているうちに青果市場・卸は集出荷データを活用して販売先に先行提案販売をすることで、相場が安定してきたと実感するまでに至りました。また、過去の出荷数や販売金額データをすぐに閲覧することで営農管理に繋げたり、日々の集出荷のモチベーション向上にも繋がることで、より沼津中央青果様への出荷数が増える好循環が生まれました。
(注1)fudoloopウェブサイト「お役立ち情報」(https://fudoloop.njc.co.jp/tips/) より『地方市場 経営革新事例』を参照
(3)へ続く
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2024年4月12日)
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