第2章 沼津中央青果様が気づいた市場の問題と課題
この章ではまず、変化する青果流通業界の中で沼津中央青果様が抱えていた問題と課題について紹介していきます。
沼津中央青果様プロフィール
所在地 | 静岡県沼津市 |
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売上高 | 96億円(2021年度) |
Webサイト | https://numachu.com/ |
2-1.問題1:買いたたきが多くなった
朝の競売から量販店バイヤーが消えた・・・
はじめに顕在化した問題は買いたたきの発生でした。沼津中央青果様が異変に気付いたのは毎朝の競売の現場から。2014年頃から量販店のバイヤーが市場に来なくなったのです。 バイヤーから話を聞くと、量販店での「働き方改革」がはじまったとのことでした。それにより、労働時間が短縮されたことで早出出勤を必要とする朝の競売には来られなくなったようでした。
一方で、今までと変わらず競売のために届けられた野菜は供給過多に。結果的にこれまで通りに競売に来ている八百屋さんなどの小規模の小売業者に安価で買いたたかれてしまったといいます。葉ネギに1束1円といった価格がついてしまうこともあったそうです。
沼津中央青果蔬菜部部長の遠藤様は「きっかけとなった『働き方改革』の流れはおそらく一過性のものではないでしょう。来なくなった量販店のバイヤーが、今後朝の市場に帰ってきて今までのように取引をすることはもうないということです。つまり、今までのスピード感 で我々も構えていてはとてもじゃないけど間に合わないんです。私たちも買い手の皆さんの働き方に合わせた行動をとる必要を感じました。」と話しています。
量販店からの注文・発注のほとんどは前日のうちに来るようになった
労働時間が短くなった量販店は、短い時間で仕入から販売までを行う必要に迫られました。プライスカードの作成などの業務も前日までに行わなければいけなくなったそうです。そのため、量販店は市場に対し、販売前日の夕方までにこれらの作業を終わらせるためにも前日までに売価をヒアリングするようになりました。
しかし、市場はこの時競売前のため、生産者が当日どのくらいの量の野菜を持ってきてくれるか分からず正確な売価を伝えることが出来ません。その中でも当日の野菜の量が少なければ他の市場から買い付けなければならず、逆に多ければ生産者から安い価格で買うことになり生産者への対価が下がってしまったり、市場が生産者の売上の補填をしなければいけない状態が続いてしまったそうです。
遠藤様は「そんな安いんじゃあんたのところには卸せないよ」といった厳しい声を多くの生産者から聞いたといいます。
入荷量が読めない状況で量販店から先に発注がくることが増加し、需要と供給のバランスが保てなくなることで青果の値崩れが発生。それによって、生産者の市場離れを引き起こす結果を招いていました。
問題1についてのまとめ
問題1は「買いたたきが多くなった」でした。量販店の働き方改革をきっかけに競売での需給バランスが崩れてしまったことが買いたたきの原因でした。市場がこれまで持っていた価格形成機能が弱くなり、買い手に価格主導権のある取引が出来上がってしまった状態といえるでしょう。
この問題を解決するために、市場の販売形態を変革させることが課題でした。
ここがポイント
・「働き方改革」を背景に量販店バイヤーが朝の市場に来なくなった
・市場の価格形成機能が弱まり、競売での作物の値段は暴落
・毎朝の相対・競売の取引形態を見直す必要がある
以上
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年7月28日)
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