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4.青果卸の経営状況の推移
〜“コロナバブル”の効果消滅〜【全12回連載】

株式会社農経新聞社
代表取締役社長 宮澤 信一 氏

 近年の青果卸の経営状況はどうでしょう? すでに“コロナバブル”の恩恵は消滅しています。

 青果卸の経営は、デフレ期は非常に厳しかったのですが、2011年度以降は取扱高も利益も上昇基調にありました。ところが2017年度から再び経営の悪化が始まりました。2020年度には、いわゆる“コロナバブル”でいったんは赤字の企業数が減少したものの、2021年度は再び増加しています。

表1.青果卸の赤字企業数の推移

 農林水産省の調査「卸売市場をめぐる情勢について(令和4年8月)(PDF : 676KB)」によりますと、2020年度の中央卸売市場青果卸売業者の平均営業利益率は、わずか0.41%です。これは、最も青果卸に業態が近いと思われる飲食料品卸売業の0.2%こそ上回っていますが、全産業平均の2.1%と比較すると、大きく下回っています。

 また、赤字企業数が増えているだけでなく、年々「特定の卸しか利益を上げることができない」という傾向が定着しています。この「特定の卸」とは、①大都市の超大型卸 ②一定規模以上の産地市場(主に地方市場) ③不動産を所有するなど本業以外の安定的な収益を確保している卸(主に地方市場)― という3パターンに分類されます。

 なお、表1.「青果卸の赤字企業数の推移」を見ると、以前は地方市場卸の方が中央市場卸より赤字企業数が少ないという傾向もありました。しかし直近の2年間は、それが薄れています。これは、前出の②③は引き続き好調であるものの、中小規模の公設市場の卸の経営が悪化していることが大きな要因と思われます。

 また、これは筆者の私見ですが、同一市場内で統合した卸の経営が、(筆者が勝手に)期待したほどは改善されていないようです。これは、集荷が減ってしまったことに加え、青果市場を取り巻く環境が予想以上に厳しくなったということでしょう。「だから合併なんかしても無駄だった。余計な混乱を招き、取引先に迷惑をかけただけだった」というのではなく、「もし統合しなかったら、どうなっていたのか」と思います。

※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年3月10日)
※本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

 

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