結論から言います。厳しい状況の青果卸売市場業界でも、規模の大きい大手業者は何とか売上(取扱高)を維持しており、逆に中小~零細になるほど売上(取扱高)が減少。しかもこの傾向は年々顕著になり、ますます格差が離れています。
まず中央卸売市場青果卸の取扱高ですが、2021年度は平均前年比は98.2%(全国中央市場青果卸売協会調査=会員78社には地方卸売市場15社を含む)でした。そのうち前年と比較可能な63社(地方卸売市場を除く)中、前年実績をクリアしたのは12社(19.0%)しかありませんが、その4割以上にあたる5社が、取扱高500億円以上の大手です。75億円未満の12社にも前年クリアが4社ありますが、残る8社のマイナス幅が非常に大きく、とても「小規模でも伸長している」とは言えない状況です。
中央卸売市場青果卸 売上規模別の経営動向(2021年度)
また、中央卸売市場青果卸の経営状況について、やはり全国中央市場青果卸売協会のデータを参考に分析しますと、2021年度の平均営業利益率が0.30%のところ、年間取扱高500億円以上の大手は0.50%と平均を大きく上回っています。それに対し、75〜100億円のクラスでは0.10%とほとんど利益がなく、いちばん小規模の75億円未満に至ってはマイナス0.01%と赤字です。この傾向は経常利益率でも、最終段階の当期純利益率でも変わりません。
一方、地方卸売市場の取扱高(全国青果卸売市場協会・農経新聞社の共同調査)はどうでしょう。2021年度は青果物合計の平均前年比が98.0%と前年を下回る中、調査対象の308社のうち前年度と比較可能な302社中、前年をクリアしたのは79社(26.2%)にとどまりました。
「青果物合計」で見た地方卸売市場青果卸の取扱高規模別分析
全体の取扱金額の半分近くの46.7%が、100億円以上の大手24社で占められており、50億円以上まで含めた61社では全体の7割を占めます。その中でも例年通り、100億円以上の大手の平均前年比は全体の平均を上回っています。とくに21年度については他のクラスは全て平均を下回り、100億円以上だけが平均を上回る結果となっています。
ではなぜ、市況の良い年も悪い年も、大手業者と零細業者では格差が開くのでしょう?
市況が良い年は基本的に生産量が少なく、その少ない量を集荷でき、他市場よりさらに高値で販売できる大手業者が有利なことは、容易に想像がつきます。
一方、豊作で市況が暴落しているような年にも、大手業者は企画販売の提案や実需者との価格交渉といった安売りに引きずられないノウハウが蓄積されているほか、(実売価格はともかくとして)出荷者の希望価格に応じる経営体力を備えていることもあると思われます。
このため中小・零細市場には、①たとえ主力アイテムではなくとも市況に左右されない商材を開発する②企画提案販売を増やす―など、特効薬とはいきませんが、「日頃からの対策」が求められます。
昔、青果流通業界のコンサルタントに、「小さいことはいいことだ」と説く方がいました。その真意は「中小卸は規模が小さいからこそ、経営者が思い立ったらすぐに実行できるメリットがある。その小回りを活かせ」というものでした。ここでいう小回りというのは、「取引ロットが小さい」というレベルのことではなく、「顧客の求めるサービスをすぐに実行する」ということです。しかし実際には、大手の方がよほど小回りが利いており、中小ほど動きが鈍いのが現実です。大手ほど努力しています。今後も格差が拡大していくのは必至です。
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年2月24日)
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