この章では、農家の経営課題に対して市場ができる具体的なアプローチ方法を紹介してきました。今回は章のまとめとして、紹介したアプローチ方法を振り返っていきます。
・農家へアプローチする前に計画を立てる（第16回）
農家へアプローチするときは、やみくもに訪問するのではなく、PDCAサイクルを回すことが大切です。対象の農家を事前にリサーチし計画を練る（Plan）、その計画を踏まえて実際に農家を訪問する（Do）、農家の課題を把握し計画や仮説を検証する（Check）、農家の分類ごとに対策を講じる（Action）、そして再び計画を作成する（Plan）、というサイクルを回していくことで効果的に農家への支援が可能になります。
・農家に市場の仕事を正しく知ってもらう（第17回）
農家から見ると市場の仕事はブラックボックスなため、不安を抱いていることを認識しましょう。それを解決するために、市場から先の流通を図式化して説明すると良いです。具体的なエンドユーザーの実績、販売経過、次年度の販売計画などを書面にまとめることを推奨します。
・情報のフィードバック1 1反あたりのデータの提供（第18回）
市場が有している出荷数量の統計資料を農家に提供しましょう。農家は売上は把握しているものの、数量は把握していない傾向にあります。1反あたりのデータを提供することで、反収と販売単価を分析できます。また、農業改良普及センター等から農業経営指標を入手し農家へ提供することも支援の1つです。数値を見ながら次の出荷シーズンの相談や提案を行うことで、より具体的な支援ができます。
・情報のフィードバック2 管内農家のデータの提供（第19回）
農家は同じ管内の他の農家の反収や出荷数量などを気にするため、本人と他の農家の出荷量などが比較できる資料を作成しましょう（比較対象の名前を伏せても十分支援になります）。データを提供することで、農家のモチベーションアップにも繋がります。
・市場ができる経営支援1 家族のコミュニケーションを支援する（第20回）
農家では、特に親子間のコミュニケーションがうまくとれていないケースが多いため、市場担当者が間に入り、場の空気を読みながら会議が円滑に進むよう支援すると良いです。自分は積極的に意見を述べず参加者に発言を促し、共通のゴールを参加者に共有させる技術を「ファシリテーション」と呼びます。
・市場ができる経営支援2 スタッフとのコミュニケーションを支援する（第21回）
スタッフとのコミュニケーションも規模拡大に舵を切った農家の課題です。コミュニケーションを活発にするため、GAP認証を利用すると良いです。GAP認証についてまずは市場が学び、農家での勉強会を市場担当者が主導することが、コミュニケーション活発化の良い支援となります。
・市場ができる経営支援3 研修を企画する（第22回）
農家向けの研修を企画することも市場ができる支援です。意欲的な農家が参加するため、市場が今後ターゲットとする農家リストを作成できます。研修企画の内容は、経営、労務管理、IT活用、栽培、マーケティングなど多岐に渡ります。講師を専門家に依頼することで研修の幅も広がります。
・市場ができる経営支援4 農家の相談相手になる（第23回）
農家は事業主でもあるため多くの悩みを抱えています。ヒアリング・コーチング・コンサルティングの技術を使い、農家の話し相手・相談相手になることで信頼関係を築いていきましょう。
このように、皆さんができる支援にはいくつもの方法があります。いずれも共通している点は、農家の視点に立った支援ということです。ある市場では、農家巡回をスケジュール化し、社長を筆頭に徹底的に農家の立場に立って仕事をしています。その市場は農家巡回をしているため農家の課題をよく把握しており、それをもとに様々なサービスを展開することで業績も順調に上向きになっています。各農家の経営課題を知った上での支援がどれだけ大切かおわかりいただけると思います。
今後も、農家への支援の王道は、バラ出荷やコンテナ流通、拠点集荷であり、その重要性は変わりません。それに加え、農家の経営課題の視点から考えた支援をぜひ実行してみてください。
市場に知ってほしい農家アプローチ実践のためのワンポイント
・農家に対して市場ができる支援は多くあります。取り組みやすそうなものからで良いので、まずは実践してみましょう。
・実践の際には、農家の視点に立ち、分類や経営課題に応じた対応をすることが大切です。
以上
※fudoloopメールマガジン24号（掲載日：2022年6月10日）
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