MENU
FREE TRIAL

無料トライアル
実施中!

MAIL MAGAZINE

お役立ち情報を
お届け!

050-3066-5400

月曜〜金曜 9:00~17:00

お役立ち情報

メルマガ

14.第2章 農業経営の課題〜農家の法人化について〜【全25回連載】

青果流通経営コンサルタント 本田 茂 氏

 さて、ここまで3つの事例を通して、各販売規模に応じて様々な経営課題があることを見てきました。共通しているのは、いずれの事例も法人化に踏み切っている点です。国が2023年までに農業法人を5万経営体まで増やすとの目標を立てていることもあり、農業の法人化については市場の皆さんもよく理解しておく必要があります。

法人化のメリットとデメリットの一例

 まず、主なメリットについて解説します。

経営面のメリット

 本メルマガで紹介した果樹農家の事例(事例2:メルマガ第10回、第11回)では、法人化後に経営者の意識が変化し、経営数値の把握や社内コミュニケーションの円滑化に繋がりました。このように、法人化は経営責任の自覚を促すため、経営陣の意識変化が起こりやすいのが特徴です。多くの法人化した農家を見ていても、経営陣の意識が変わることは非常に大きなメリットだと感じています。
 また、個人事業の農家では家計と事業経費の区別をしていないことが多いです。このような農家では、確定申告後にようやく自分たちの所得を認識します。法人化すると、家計は法人からの給料でまかなうことになるので、家計と経営の分離がしやすくなります。経営数値が明確になり、会計の健全化に繋がります。
 経営数値が明確化され会計が健全化すると、会社の価値が決算書に現れるようになり、会社の信用力が向上します。これにより、企業からの出資や融資なども受けやすくなります。
 台風からの復旧を目指している大規模施設園芸農家(事例3:メルマガ第12回、第13回)のように、個人事業では所有できないような施設や機械設備を導入しやすくなるのも法人化のメリットの1つです。これにより、規模拡大や効率の良い経営を行うことができます。
 さらに、土地利用型農業では、法人化して意欲的な経営のイメージを周囲に見せることで、農地が集まりやすくなることを期待する農家も多いです。事実、地域差はありますが、法人化した経営体に農地が集まる傾向にはあるように感じます。
 ここまで紹介したような法人化のメリットから、今後は、後継者のいない農家が法人化して企業やJAに事業を引き継いだり、法人化した農家を後継者が買い取ることによる事業継続も期待されています。

資金面のメリット

 本メルマガの果樹農家の事例(事例2:メルマガ第10回、第11回)でも説明しましたが、法人化後2年間は消費税の免税事業者となります(畜産など大きな農家ではあえて1年目から課税事業者となるケースもありますが、ここでは割愛します)。また、個人事業の時は事業主への報酬は経費と見なしませんが、法人化すると役員報酬として経費計上できるため、結果、納税額が減少します。
 さらに、メルマガ第1章でも触れましたが、今後国の補助金は、法人化している方がポイントが高くなり、採択されやすくなります。

人材確保面のメリット

 経営面でのメリットで「法人化すると信用力が増す」と説明した通り、雇用の面でも「個人事業の農家で働くよりは農業法人で働く方が安心する」という声をよく聞きます。各県にある農業大学校では、法人化していないとそもそも募集を受け付けないところもあります。このように、法人化には「安心・安定」というイメージがついてまわります。
 デメリットでも触れますが、法人化すると従業員数に関わらず社会保険の適用事業所になるため、社会保険料負担が増えます。保険料負担だけを見ればデメリットとなりますが、裏を返せば、従業員への保障がきちんと行われている会社という証になり、社員定着に繋がります。

 一方で、デメリットもあります。

経費面のデメリット

 先ほども触れましたが、法人化により、社長1人だけの法人であっても役員報酬の額に応じて社会保険への加入義務が生じます。社会保険料は会社と従業員でそれぞれ半分ずつの負担となりますので、規模の小さな農家では、節税額よりも社会保険料負担の方が大きくなることがあります。また、確定申告時の申告項目が増加するため、事務作業が複雑化します。これを機に税理士と契約するケースも多く、税理士費用が増えることにもなります。
 さらに、農業は個人事業に対する事業税が免除されていますが、法人化すると赤字決算でも最低限7万円ほどの法人住民税の納付が必要です。

事務面のデメリット

 会社法では、株式会社・合同会社に対して計算書類の作成が義務付けられています。その際、単式簿記では、正しい財産の把握や貸借対照表の作成ができません。そう考えると、複式簿記は当然になります。その他上述した税務申告や社会保険などの労務手続きも増えるため、事務負担が増加します。

精神面のデメリット

 法人化した農家は、地域の中で注目を浴びることが多いです。それに伴い、世間体を気にしたり、プレッシャーがかかることを大きなデメリットと感じる農家もいるようです。特に、年配者がそれを気にする傾向にあるようで、親世代が法人化に反対するため法人化に踏み切れないというケースも見られます。

 ここまで解説してきたように、法人化には様々なメリットがあります。一方で、補助金の要件を満たすためだけに法人化し、社会保険料負担が重くなり資金繰りで苦しんだ農家や、経営意識が変わらずに事務負担だけが重くなり困っている農家も、筆者は数多く見てきています。
 今後、意欲ある農家が法人化に踏み切ったときには、法人化したという事実だけでなく、経営に対する取り組みを総合的に見ていくことが大事です。

農家の法人化に市場がどうアプローチするか

・法人化を目指す農家や法人化を躊躇している農家と、メリット、デメリットを一緒に議論してみましょう。
・法人化した農家、法人化を目指す農家は、雇用や規模拡大に積極的な農家である一方、経営課題も高度化しています。積極的に課題を聞いてみましょう。信頼関係が構築され、市場への出荷も増えることが期待できます。
・農家の法人化前と後に経営者と会話し、経営に対する意識の変化を感じ取りましょう。そこから、意識が変化した農家へ市場がどう有利販売するかを模索しましょう。

以上

※fudoloopメールマガジン14号(掲載日:2022年3月25日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

前の記事 一覧 次の記事
電話で
お問い合わせ
月曜〜金曜 9:00~17:00
050-3066-5400
WEBサイトから
お問い合わせ
x