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11.第2章 農業経営の課題 事例2(後編)〜販売規模3,000万円~5,000万円の農家の経営支援〜【全25回連載】

青果流通経営コンサルタント 本田 茂 氏

 前回は、販売規模3,000万円を超えて発展してきた農家の事例を紹介しました。その経営課題に対して、筆者は以下の流れで課題整理をし、支援していきました。

事例2 経営支援とその後の変化

正社員雇用

 正社員雇用については、3年後に果樹で新規就農したい若者が現れたことで、2年間限定での正社員雇用を開始しました。しかし、今まで家族経営のため生産部門を独りで背負ってきた夫は、人に指導した経験がありません。社員は夫に委縮して質問することができずに、分からないまま作業に当たっていたようです。
 多くの農家では、雇用する際に作業ばかりやらせる傾向にあります。毎日定型作業をやっているうちに先が見えなくなってしまい、若い従業員が定着しないことも多々あるようです。
 そこで、毎月、夫と社員と私で三者ミーティングを実施することにしました。このミーティングでは、農業の作業と技術、それぞれに対して振り返りを行いました。一つ一つの作業について、この作業は何のために行うのか、夫の意図を掘り下げて議論するようにしました。
 毎月のミーティングを繰り返したことで、次第に夫は社員に仕事を任せられるようになります。これにより、夫は自分の時間を増やすことができ、経営課題に取り組めるようにもなりました。社員は仕事を任されたことで次第に自信をつけ、夫にも堂々と質問できるようになり、パート従業員への指導までできるように成長していきました。この社員は、夫が農地あっせんなどの支援をし、3年後に晴れて独立就農へ。
 その後も、事例の農家では、果樹栽培に興味のある農大生卒の正社員の採用が決まっています。

経営の見える化

 次に取り組んだのは、品目ごとの収量や労務費の算出による現状の分析と、5か年の損益計画や資金繰り計画の作成です。これにより、投資後の経営の状況を見えるようにしました。これだけ経営発展してきた農家でも、現場作業に追われ品目ごとの収量など基本的な数字を把握しておらず、感覚に頼った経営をしています。
 果樹経営だけでなく農業全般に言える特徴は、収入がある月とない月とが明確に分かれていることです。その上、前述の通り感覚的な経営をしているため、1年先の資金繰りを頭の中だけでなんとか回しているのが実態です。
 事例の農家では、1年先の資金繰りを見える化したことで、資金の対策にもいち早く手を打つことができるようになりました。また、現状の数字を夫婦で共有できるので、夫婦での経営の方向性も一致し、安心して現場に集中できるようになっています。

法人化

 最後に法人化です。法人化は顧問税理士の指導のもとで実施しました。法人化後2年間は、消費税の免税事業者となるため消費税の節税ができます。法人化後3期目に消費税の課税事業者となるため、3期目にいちごの設備投資を実施することで、設備投資分の消費税が課税仕入れとなり、消費税の還付を受けることができます。一方、法人化することで社会保険料の負担が大きくなりましたが、資金繰り計画を作ったことで、先に手を打つことができ乗り切れました。
 法人化は、夫の経営に対する意識にも良い変化をもたらしました。今までは妻に相談せずに独断することも多かったそうですが、法人化の際に妻を役員としたことで事前に相談するようになったそうです。また、生産現場重視だったのが、数字や人材育成をより意識するように変化しました。
 さらに、法人化、正社員雇用、投資と意欲的に経営する夫婦の姿に、長男が自ら農業高校への進学を希望し、後継者の確保にも繋がっています。

 この事例の農家では、販売は直接販売と地元の地方市場に分けていますが、市場との信頼関係が構築できています。シーズン前後には担当者が、面積当たりの収量や売上などを記載した提案書を携えて訪問してくれるため、有利販売のための一生懸命さが伝わってくるそうです。この農家が次の投資に踏み切ることができるのも、販売面で市場がしっかりパートナーとして機能しているからです。

経営課題達成のためのポイント

・品目ごとの収量や収支計画など数字を見えるようにして夫婦の目線を合わせる
・1年先の月ごとの資金繰り表を作成し、早く手を打てるようにする
・正社員の育成は、ただ作業をさせるのではなく、振り返りのミーティングを実施する
・有利販売してくれる地元市場との信頼関係を構築する

以上

※fudoloopメールマガジン11号(掲載日:2022年3月4日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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