人口、とくに若年層の減少、海外の人材の日本離れなどにより、人材確保が困難になっていることは、いうまでもないでしょう。かといって青果流通業界の薄い利益では、マスコミで話題になっているような高額の報酬を用意することもできません。もちろん確保した人材の育成も重要ですが、その前に人材が「いない」「確保できない」のでは話になりません。
まずはわが国の人口推移をみてみましょう。いわずもがな、わが国の人口は減少に入り、しかも若年層の割合は大きく低下しています。今後はさらにその傾向が強まることは必至です。
日本の総人口の推移(外国人含む)
しかも厚生労働省によりますと、今年2月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月から0.01ポイント下回り、1.34倍となりました。大企業を中心に賃上げの動きが加速し、条件の良い職を求めて転職希望者が増えたことなどが要因といいます。「労働者が働き先を選ぶ」。つまり、会社経営者は「働きに来て頂く」という時代です。
その中で少しでも人材を確保するためには、どうしたらいいでしょうか? 最低限の報酬は前提としても、昔から「3K」とされたうえに、人材定着・育成方法が確立されていなかった青果流通業では、今もって難しい部分があります。
それでも若干ながら、効果を上げているケースがみられます。
まずは、現在主流となっているウェブ上の求人活動の強化です。とくに2020年からは、新型コロナウイルス下でいち早くウェブでの会社説明会を強化し、以前より広い応募者(地域、学歴、年齢)を集めているところがあります。さらに最近では、メタバース(ウェブ上のバーチャル空間)で説明会を行うケースまでみられるようになりました。
また、「企画部」「新規事業開発部」など、新卒者が食いつくような部署を設置し、まずはその部署への配属を約束することで、新卒者を確保しているところもあります。同じような方法ですが、グループ会社でおしゃれな飲食部門を立ち上げ、「ここで働いていることが自慢できる」ことを強調するケースも出てきました。
一方、以前なら毎年、20人以上の新卒者を採用していた大手業者では、最近は10人以下に絞り、その代わりに中途採用を増やしています。業界は違えども他業界の大手企業での勤務経験がある人材は、青果業界の“ベタベタな”営業手法には走らず、企画提案営業などができるので、とくに大手顧客への営業では能力を発揮するということです。
ただ、そのウェブ求人ですが、応募者が誰でも必ず見るような大手サイトには、青果業界の企業はあまり掲載されていません。これは、費用が年間数百万円単位になることや、とくに新卒応募者に訴える魅力ある情報がないことなどが理由と思います。
また、そのようなサイトでは、「過去3年間の採用実績」と「過去3年間の退職者」の掲載・公表が必須です。しかし青果業界の掲載例では、過去3年間の採用実績がなかったり、半分以上が3年以内に辞めてしまっていた会社もあり、これでは求人広告を出したことが逆効果です。
一方、中小仲卸などでは、同じ広告を掲載し続けていて、まったく応募がないことも多くなっているようです。
この状況をなんとかできないか?と思い、当社ではこのほど、全国初の青果市場専門求人サイト「やっちゃばジョブ」を開設しました。特長は、「全国初の青果市場専門求人サイト」であることに加え、「専門紙が運営する安心感」、そして「豊富なコラム、トピック」です。本サイトでは、新卒者だけでなく、他業界の勤務者にも、青果市場で働くことの魅力をPRします。
そして恐らく、主たるターゲットとなっていくのは転職希望者だと思っています。青果流通業界には「この業界の仕事は好きなのだが、会社が、あるいは上司がイヤで辞めた」という理由で退職した人材が大勢います。もったいない限りです。そのような人材に、将来を考えた人材育成に前向きな、きちんとした会社を紹介することで、農経新聞の発行とは違った手法で、青果流通業界全体の活性化に役立ちたいと思っています。
今後徐々に実際の求人情報が載っていきますが、真っ先に手を挙げたのは、やはり経営内容がよく、人材獲得にも前向きな会社です。そのような会社が、どうやってウェブで自社の魅力をPRしているか、この仕事のやりがいを説いているか、参考にしてください。もし「当社はそんなに魅力的ではない」というなら、魅力的になるよう努力しなければなりません。
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年5月19日)
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