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5.買付集荷の増加
〜経営圧迫、ただし一部は利益捻出〜【全12回連載】

株式会社農経新聞社
代表取締役社長 宮澤 信一 氏

 利益率の低い「買付集荷」の増加がこのまま増えれば、青果卸はつぶれてしまうのでしょうか?

 青果卸の経営を圧迫する大きな要因が、その「買付集荷」。横持運賃などが発生するため、通常は委託集荷よりも利益率が大幅に低下します。具体的には、どの程度の利益率でしょう?中央卸売市場青果卸の全国団体である全国中央市場青果卸売協会の調査によると、2021年度の会員卸の買付集荷の平均粗利率は4.45%。一方、委託集荷の粗利率は8.23%と、倍近くも差があります。ただ、買付集荷の粗利率は、これでも近年は徐々に改善されているのです。2017年度には3.85%しかなかったのですから。

2021年度中央卸売市場青果卸の経営動向

 さらに危惧されるのは、その買付集荷が増えていることです。1980年代までは、中央卸売市場青果卸の買付集荷は全体の集荷量の20%以下でした。しかしその後は産地の出荷先市場の絞り込みが年々顕著となったため、中小卸は産地から直接、委託出荷することが難しくなり、近年は40%以上と倍増しています。年間取扱高300億円クラスの大手でも、50〜60%に上るところもあります。買付集荷が増えるということは、逆に言えば委託集荷が減るということで、その分は超大手卸に委託出荷されたり、市場外流通に流れていることになります。年によって変動はあるものの、青果卸の平均経常利益率は0.3%前後で推移しています。前回も述べましたが、これは全産業平均の2.1%と比べて、非常に低い水準です。

 では、買付集荷を減らして、委託集荷を増やすことはできるのでしょうか? 特に系統品の場合は現実的には不可能ではないでしょうか。やるとしたら、①無理に品揃えせず、集まる商品だけを販売する②個選品を強化するくらいしかありませんが、①では実需者が離れてしまい、②は現在の入荷割合によって変わりますが、ゼロからのスタートであれば、数年、いやそれ以上の時間が必要ですし、努力してみても、できないかもしれません。

 ただ、なかには数社ですが、買付比率が80%以上でも、毎年立派に利益を出しているところがあります。ひと言ではとても言い表せませんが、要は「買付を前提に業務を組み立てている」ことが要因です。また、「(受託拒否ができない)委託出荷ではないが、出荷者が買い取りを希望したら、とにかく全量買い付けろ」と営業員に指示している会社もあります。それにより、品薄になったときも出荷してもらえるようになり、トータルでは採算に乗るというのです。

 そして、委託出荷比率の高い産地市場は、毎年、利益を計上するところが多いのですが、ここにも一つ、“落とし穴”があります。言わずもがなですが、葉物などに特化している場合、“豊作貧乏”に陥ることがあることです。ただ、ここでも、複数の特産品を産地化することでリスクヘッジを図る例もあります。もちろん長期的な計画の下、ぶれずに取り組んできた結果であって、誰でもすぐにできることではありません。

 だからこそ、「今から動くこと」が大事です。性急に動けということではなく、買付が増えて利益が圧迫されているなら、「何をすべきか」を、まず社長自身が、そして会社全体で考えることです。

※fudoloopメールマガジン(掲載日:2023年3月17日)
※本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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