前回までは、働き方改革とは何かという基礎を解説してきました。いよいよ今回からは、市場での働き方改革を取り上げます。この度、農経新聞社の宮澤社長へ市場の働き方改革について話をうかがいました。今回から2回にわたり、宮澤社長のお話を対話形式で紹介していきます。
―市場の働き改革の変遷や現状を教えてください
これまで市場は、非常に休日数が少ない状態で働いていました。そもそも、戦後の市場の休日は月3日。1961年になってようやく、日曜日が休日になり、次第に祝日も休日になっていきます。次いで「日曜日と祝日以外を休もう」という考えになったのは、1985年頃のことでした。営業にあまり支障のない、祝日のない週の水曜日を月1~2回休日とする「4週6休」を取り入れ、そこから20年ほどこの状態が続きます。さらにもっと積極的に休日を増やそうという考えになったのが10年ほど前。人材確保が難しくなってきたことが理由でした。現在は、すべての市場がほぼ週休2日となり、他業界の企業と比較しても、年間休日数がそこまで大きく変わらないところまで来ています。
また、業界で働く人にも「働き方を変えよう」という意識が非常に希薄でした。1970代になると、卸売開始時刻以前に卸売をする「先取り」が始まったことにより、特に仲卸で、夜中に出勤し夕方に退勤するという長時間労働が定着し始めてしまいます。当時の経営者は「休ませるより儲けよう」という意識が強く、新たに入社してくる人も「この業界は長時間労働が当たり前」という前提で入社してくることが多かったため、働き手にも現状の働き方を変えるという意識がほとんどありませんでした。
―市場で働き方改革が必要な理由は何でしょうか
働き方改革は人材確保のために必要ですが、その理由は2つあると感じています。
1つ目は、賃金を上げるのが難しくなってきたからです。バブル期までは、物価が上がり卸売市場経由率も80%程度ありました。中小企業も比較的経営に余裕があったため、高額な賃金を提示することで従業員の確保ができました。しかし現在は、賃金を上げることが難しくなっています。なぜなら、卸売市場流通が縮小していることに加え、生産性が低いからです。同じ資源量であれば当然、生産性が高いほど企業の利益は上がります。今の市場では生産性の低さから利益が上げられず、賃金を上げるための資金の余裕がなくなっているのです。生産性を上げられずそれにより賃金も上げられないのであれば、やるべきことは2つあります。それは、新しいビジネスモデルを考えることと、働き方を合理化することです。前者は多くの、特に中小企業にとって非常に難しいことを考えると、働き方を合理化しないと人は定着しません。
2つ目は、「お金ではなく、ゆとりある生活を求める人」が増えていることです。少子化が進んでいることを考えると、我々が思っている以上にこの傾向は強くなるとさえ考えられます。
この2つのいずれに対応するにも、業務の無駄を省く必要があります。これが、市場で働き方改革が必要な理由です。
※取材:2022年7月
※fudoloopメールマガジン(掲載日:2022年9月2日)
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