今回からは、情報提供以外に市場ができる支援について考えていきます。
農家では、親子の関係がうまくいっていなかったり、従業員とのコミュニケーションに困っていることを前章でも紹介しました。農家と接する機会の多い皆さんの中には、これらの経営課題に薄々気付いている方もいるかもしれません。では、このような経営課題に対して、市場はどんな支援ができるでしょうか。
今回は、家族間のコミュニケーションの円滑化支援策を紹介します。
話し合いの場の円滑化
市場の皆さんは、数々の産地会議に出席してきたことと思います。そこでは場の空気を読みながら、農家・JA・市場の三者が意見を出し合い、共通のゴールを確認し会議を進めてきたことでしょう。懇親会では、場の盛り上げ役も担ってきたのではないでしょうか。市場の皆さんが持っているこの「場の空気を読みながら会議を進める」という技術は、農家への経営支援にも活かすことができます。
このような、場の空気を読みながら会議が円滑に進むよう支援する技術のことを「ファシリテーション」とも呼びます。具体的には、以下のようなことを行いながら、話し合いの場をよりよくしていく技術です。
・出席者全員が発言するように促す
・ホワイトボードなどを活用して、会議を見える化する
・無理に意見をまとめようとせずに、良い意見が出たら都度共感する
・共通の意見や目標が出てきたときは、全員に共感を促す
この技術については多くの書籍も出版されています。簡単なようで、意外と奥の深い技術です。関心のある方はぜひ知識を深めてほしいと思います。
家族間の話し合いの場を設け、間に入る
では、この技術を活用して具体的にどのような支援ができるでしょうか。
筆者の見てきた農家では、親が子どもに仕事を任せることができず何にでも口を出してしまうため、親子の衝突が多いと感じています。今回は、このような農家を例に支援策を考えてみます。
まず、市場の担当者が間に入り、話し合いの場を作りましょう。その上で、皆さんが話し合いの場の進行役を担うのです。進行役ですので、自分の意見はなるべく言わず、出席者全員に発言してもらうこと、共通のゴールに導くことが皆さんに課せられた大きな役割です。そして、以下のような流れで話し合いを進行していきます。
・親が子どもに仕事を任せられないのはなぜか、親に発言をしてもらう
・子どもはそれをどう思っているのか、子どもにも発言してもらう
・お互いが納得できるいいアイデアがないか、一緒に考えてもらう
・良い意見が出てきたら、全員で共感、共有する
当事者だけでは建設的な話し合いができないことも多いです。お互いが知っている市場担当者が間に入るだけで、雰囲気はだいぶ変わってきます。
市場に知ってほしい農家アプローチ実践のためのワンポイント
・農家を定期的に訪問し、家族間の話し合いの場を作りましょう。
・家族の間に入り、話し合いがうまくいくように進行してみましょう。その際、全員に発言してもらうこと、話し合いを共通のゴールに導くことを意識しましょう。
※fudoloopメールマガジン20号(掲載日:2022年5月13日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。