この章からは、販売規模の大きい農家がどのような経営課題を抱えているかを解説していきたいと思います。事例で見ていただく方がわかりやすいため、著者が実際に経営相談を受けた事例を紹介していきます。
今回は、販売規模1,000万円~2,000万円の農家の事例です。
事例1 販売規模1,000万円~2,000万円の経営相談
東北は土地利用型農業(稲作+転作作物)が多い地域のため、本事例のように、稲作、大豆、飼料米を栽培しながら新たに園芸に取り組む農家が多いです。
事例の農家は、息子が就農して数年後、園芸を拡大して正社員雇用を開始し、2020年に法人化をしました。法人化の目的は、(1)地域で法人化することで農地を集めやすくすること、(2)事業承継を行うことで息子に社長としての意識を持って経営してもらうこと、(3)農業を息子に任せ、両親は引退に向けて息子を手伝う程度へと徐々に移行していくこと、の3点でした。
ヒアリングの結果、経営の問題は、収益性が低いことと、赤字の原因が特定できていないことでした。この農家は多品目を栽培していますが、感覚で栽培しているため、部門別の損益がわかっていません。実は、このように感覚だけに頼って栽培をしている農家は本事例だけではなく、ほとんどの農家が同様の問題を抱えています。
息子の社長としての意識も問題でした。地域活動に一生懸命で、経営は親に頼りきりでした。親も、農家の長男として大事に育てた息子が就農してくれたことが嬉しく、今まで厳しくしてこなかったようです。
また、借入金が売上高に近いくらいあり、財務上も問題を抱えていました。
さて、著者はどのように経営の相談に乗り、問題を解決していったでしょうか。
皆さんならどう解決していくか、ぜひ考えてみてください。解決策は次回解説します。
今回の事例のポイント
親子の仲は良く、息子が実家に戻ってきてくれ、法人化して園芸を拡大している事例です。
このようなケースでは、後継者が戻り、前向きに規模拡大に取り組み、投資や雇用にも積極的な反面、収支が悪化して財務的に問題を抱えている場合があります。
以上
※fudoloopメールマガジン08号(掲載日:2022年2月4日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。