今回は、農業政策の変化について見ていきます。
現在、農林水産省では2兆円を超える予算が組まれ、様々な補助事業が実行されています。そうした政策の基となっているのが、「食料・農業・農村基本法」(以降、「新基本法」)です。かつては農業基本法(以降、「旧基本法」)という法律でしたが、食料・農業・農村の状況の変化に合わせて内容が見直され、法律名も変わりました。
この新旧基本法を理解することが、農業政策のこれまでの変化だけでなく、今後の方向性を捉えることにも繋がります。
表:新旧基本法の違い
旧基本法下での農業
旧基本法では、農業を補助金で守り、零細農家の所得を価格で保護していました。全国の各産地に集荷施設や予冷施設が補助金で建てられ、JAから市場へと護送船団方式の流通が整備されていきました。零細農家を守り所得を上げるという、旧基本法の目的と市場の発展が合致していたことがよく分かります。
しかし、食料供給は過剰となり量販店の購買力や販売力が強くなることで、従来のような護送船団方式の流通が通用しなくなっていきました。そして次第に、「担い手」と呼ばれる農地の受け皿となる本格的な農家と、兼業農家に階層化されていきます。また、高齢化した農家だけに頼ると、農地が守れなくなることも課題になっていきます
新基本法下での農業
そこで平成11年、新基本法が策定されます。ここから、零細農家を守る従来の政策から、担い手(本格的農家)に農地を集約させ、経営を発展させていく政策へと移行していきます。卸売市場法改正、卸売市場の研究会、農協改革と、農業政策は近年になり急に変わったかに見えますが、平成11年の新基本法の政策目標を見ると、この時に既に基本方針が明記されていることが分かります。
民主党政権後の平成24年安倍内閣の発足後、この新基本法に基づく具体的な法制度の見直しが進み、皆さんの記憶にも新しい「農業経営力強化プログラム」が、平成28年に制定されます。このプログラムが目指したのは、多様な流通の選択と資材価格の低下による、本格的農家の自由な経営でした。その結果、農協改革や卸売市場の再編、流通の多様化といった近年の動きに繋がっていきます。
では、基本法を理解することが、農家へのアプローチへどう活きてくるのでしょうか。今後の農業政策の方向性と併せて、次回解説していきます。
市場に知ってほしい農家アプローチのためのワンポイント
農家への補助事業をはじめ、今の農業政策の基になっているのが新基本法です。新基本法には農業政策の基本方針も明記されていますので、一度確認してみましょう。
参考:奥原 正明「農政改革の原点」,日本経済新聞出版,2020年
以上
※fudoloopメールマガジン05号(掲載日:2022年1月14日)
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