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9.第2章 農業経営の課題 事例1(後編)〜販売規模1,000万円~2,000万円の農家の経営支援〜【全25回連載】

青果流通経営コンサルタント 本田 茂 氏

 前回は、販売規模1,000万円~2,000万円の農家の課題の事例を紹介しました。その経営課題に対して、筆者は以下の流れで課題整理をし、支援していきました。

事例1 経営支援とその後の変化

赤字の原因の特定と価格交渉

 まず取り組んだのは、部門別損益計算を行い、赤字の原因を突き止めることでした。そこでわかったのは、業務用に販売しているねぎの価格と市場の平均相場に乖離があることでした。事例の農家にこの現状を説明しましたが、規格を簡素化しておりこの価格でも問題はない、もっと規模拡大すれば利益は増やせる、と思っていたようです。また、過去に市場担当者に価格交渉をしたところ、突然「それならばいらない」と言われたことがあり、顧客と価格交渉をすることにも苦手意識を持っていました
 業者への価格交渉のやり方を指南して実行したところ、こちらの要望通り価格を上げてくれましたが、しばらくして注文がストップされます。突然販売先がなくなり、新たな販路開拓も容易ではないことから、元の取引先とは、価格を下げることで取引を継続してもらうことになりました(とはいえ、以前よりは値上げになりました)。
 取引の継続とはなったものの、取引先の担当者も目先の相場変動と受発注のやりとりに一生懸命で、農家に気を配る余裕はないように感じました。取引先に対して価格交渉をした際には、「数量を減らす。注文を止める。だから価格はこちらの言う通りにしろ」という市場特有ののらりくらりとした対応をされ、意欲を持って就農した若者に対してそれはないだろう、と憤りを感じた瞬間でもありました。
 後継者が戻り、園芸を拡大しようとする農業法人は大変貴重な存在です。安定経営に繋がる継続的な相対販売提案を市場の皆さんがしてくれたら、彼らはどんなに心強いでしょうか。第1章でも繰り返し解説した通り、このような農家の課題に市場が率先して向き合うことが、今後の市場経営を考える上でも非常に大切だと考えます。

息子の経営者としての意識改革

 財務分析した数字をたたき台に、父親と息子と筆者で三者面談を繰り返し、息子には法人の社長として親に頼るのではなく、事業主としての覚悟を持つよう粘り強く話をしました。家庭内では衝突を恐れ、本音での話し合いができていない農家も多いです。農業は親子間の問題が非常に難しく、事例のように衝突を避けてお互い遠慮するケースもあれば、逆に、父子で感情的になってしまい口もきかないようなケースもあります。

正社員雇用の見直し

 規模が2,000万円以下の農家では、正社員の雇用は収益性を下げる原因になります。正社員ということは周年雇用です。つまり、作物を出荷しない農閑期にも固定費がかかるため、どうしても収益性が下がります。事例の農家では、数年後に親戚に就農する予定の方を、研修を兼ねて正社員として雇っていました。その方が急遽就農が早まり円満退職されたことを機に、当面は正社員雇用ではなくパート雇用とすることを提案し、固定費の削減に取り組みました。

支援の成果

 赤字部門のねぎは、規模縮小、収量拡大と労務費削減、販路開拓や価格交渉の継続により、黒字化を目指すことになりました。さらに、元々収益性の高い飼料米の割合を増やすこと、正社員ではなくパート雇用にすること、その他固定費の削減などに取り組むことで、全体の収支は黒字化し、財務の健全化に向かって頑張っています。息子の意識もだいぶ変わり、社長としての意識も芽生えてきたようです。

経営課題達成のためのポイント

・部門別損益を数字で把握する
・取引先と数量と価格をきちんと商談する
・親子間で数字のたたき台をきちんと見て、現状の課題ややるべきことを話し合う
・雇用は、部門収支を見ながらパート雇用→正社員雇用の順番に検討していく
・事業承継は、親が先に行動してしまうのではなく、息子に任せ、引き継ぐ覚悟が大事

以上

※fudoloopメールマガジン09号(掲載日:2022年2月18日)
※本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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